簡単な概要
この動画では、宇宙が誕生と終焉を周期的に繰り返すというサイクリック宇宙論の最新の研究について解説します。オランダの研究者フロリアン・ノイカートの研究チームは、現在の宇宙が5回目のサイクルである可能性を示唆し、量子メモリ行列(QMM)という新しい概念を用いてエントロピー増大の問題を解決しようとしています。また、初期ブラックホールがダークマターの候補である可能性や、ブレーン宇宙論を応用したエキピロティック宇宙論など、他のサイクリック宇宙論についても紹介します。
- 現在の宇宙は5回目のサイクルである可能性
- 量子メモリ行列(QMM)によるエントロピー問題の解決
- 初期ブラックホールがダークマターの候補
導入
宇宙は始まりと終わりを何度も繰り返しており、現在の宇宙は5周目である可能性があるという仮説を紹介します。この仮説、サイクリック宇宙論とその最新の研究について解説します。
サイクリック宇宙論の概要
2025年8月、オランダの量子コンピューティング研究者フロリアン・ノイカートが率いる研究チームは、宇宙がビッグバンで始まり、ビッグクランチで終わるサイクルを少なくとも3〜4回繰り返しており、現在の宇宙がおそらく5回目のサイクルであると発表しました。また、残りのサイクルは最大でも実満しかないことを示しました。ビッグクランチは宇宙終焉の仮説の一つで、宇宙の加速膨張が終わって収縮に転じ、最終的には宇宙の全てが無次元の1点に収束するという考え方です。この1点が再びビッグバンを起こして膨張し、宇宙の新たなサイクルが始まります。この跳ね返りをビッグバウンスと言い、宇宙が始まりと終わりを周期的に繰り返しているという仮説をサイクリック宇宙論または循環宇宙論と言います。
サイクリック宇宙論の歴史
1922年、ロシアの宇宙物理学者アレクサンドル・フリードマンは、アインシュタイン方程式を宇宙に適用し、宇宙の様子を記述するフリードマン方程式を導き出しました。フリードマン解は大まかに分けて3タイプあり、どれも宇宙は膨張や収縮をすることを示していました。1927年、ベルギーの宇宙物理学者ジョルジュ・ルメートルは、アインシュタイン方程式を解いて宇宙が膨張し続けていることを数学的に導き出し、膨張宇宙論を提唱しました。1929年、アメリカの物理学者エドウィン・ハッブルが遠方の銀河が遠ざかっていることを発見し、宇宙の膨張が観測的に明らかになったことで膨張宇宙論が支持されるようになりました。
膨張宇宙論の問題点と振動宇宙論
膨張宇宙論では、時間を遡ると宇宙の始まりが無限に小さい一点(特異点)になってしまうという問題がありました。特異点は従来の物理法則が通用しないため、研究者たちは宇宙の始まりを回避すべく、膨張宇宙論以外の宇宙論の可能性を探りました。そのうちの1つが、フリードマン解の3タイプのうち、宇宙は膨張と収縮を永遠に繰り返すとする周期解を元にした振動宇宙論でした。アインシュタインも振動宇宙論についての短い論文を発表しましたが、振動宇宙論にも問題がありました。
エントロピー増大の問題
1934年、アメリカの数理物理学者リチャード・チェース・トルマンは、宇宙が繰り返されるとエントロピーが増大し、サイクルの期間が長くなり、サイズも大きくなっていくと指摘しました。これは時間を遡ると膨張宇宙論と同様に宇宙の始まりができてしまうことを意味しており、永遠に繰り返す宇宙は成り立たないと指摘しました。こうして振動宇宙論は暗礁に乗り上げましたが、逆に膨張宇宙論は着実に発展していきました。
ビッグバン宇宙論の発展
1948年、ジョージ・ガモフが初期宇宙は超高密度の小さな火の玉だったとするビッグバン宇宙論を提唱しました。1964年には、ガモフが予言していた宇宙マイクロ波背景放射が発見され、1965年にはロジャー・ペンローズとスティーブン・ホーキングが宇宙の始まりに特異点が存在することを理論的に保証する特異点定理を発表しました。1981年には、佐藤勝彦とアラン・グースがインフレーション理論を提唱し、これとビッグバン宇宙論が現在の標準宇宙モデルの基礎となりました。一方の振動宇宙論は100年近く日の目を見ないままでしたが、21世紀に入るとエントロピー増大の問題を回避できるようになり、サイクリック宇宙論として再燃しました。
量子メモリ行列(QMM)
ノイカートの研究チームは、エントロピー増大の問題を解決するために、量子メモリ行列(QMM)という新しい概念を編み出しました。QMMにおいて時空は連続的ではなく、量的な小さなセルの集合体であり、それぞれのセルは素粒子の通貨や相互作用といった量的な情報を記憶することができるとします。つまり、時空そのものを目に見えない巨大な記録媒体と見なしたのです。そして、セルの容量に限界を設け、限界に達すると書き込まれた情報はそのままにビッグバウンスが始まるとしました。前のサイクルのエントロピーは情報としてセルに痕跡が残りますが、物理的には完全に初期化されるためエントロピーは増大しないのです。
ブラックホール情報パラドックスとの関連
ブラックホールに吸い込まれた情報はどこへ行くのかというブラックホール情報パラドックスに対して、ノイカートはQMMも1つの解決策になりうるとしました。ダイヤモンドがブラックホールに飲み込まれる時、周囲の時空セルがダイヤモンドを記録します。するとブラックホールが最終的に蒸発しても時空セルには黒鉛ではなくダイヤモンドの情報が残るというのです。
宇宙のサイクル数の推定
QMMモデルでは各サイクルで情報が時空セルに書き込まれるため、今の時空に蓄積された情報量を調べれば、これまで何回のサイクルが繰り返されたのか推定できます。ノイカートの研究チームは、宇宙マイクロ波背景放射の精密観測や宇宙年代測定、銀河の大規模構造などの観測データから現在の情報量を推定しました。その結果、現在の宇宙を再現するためには過去に3.6回前後、およそ4回のサイクルを完了している必要があることがわかりました。また、情報として蓄積されている宇宙の年齢はおよそ620億年と見積もられました。また、研究チームが情報の書き込み限界まであとどれくらいサイクルを繰り返すことができるか推定したところおよそ9.7回、実満という結果になりました。このサイクルを使い切った後、宇宙はビッグバウンスを起こすことなく膨張し続けながら静かに終わっていくと考えられています。砂わ中の残期は住未満ということです。
初期ブラックホールとダークマター
QMMにおいては、全サイクルまでに蓄積された歪みや村などの宇宙の痕跡はサイクルが変わっても完全に消えず、情報の揺らぎとして持ち越されます。シミュレーションによると、この情報ゆらぎは新しい宇宙で村として振る舞うそうです。そして村の程度は重力によってどんどん激しくなり、最終的には重力崩壊を起こして初期ブラックホールの形成につながることが示されました。初期ブラックホールはビッグバン後わずか1秒未満に生まれたとされており、その質量は構成期限のものよりずっと小さく、サイズもバチクソ小さいです。なので観測することがめちゃくちゃ難しく、存在するかどうかよくわかんない白物でもあり重力でのみ存在を知ることができる謎の物質、ダークマターの候補の1つとなっているんです。
他のサイクリック宇宙論
2001年、ポール・スタインハートとニール・トゥロックはブレーン宇宙論をサイクリック宇宙論に応用しました。ブレーン宇宙論とは、私たちが認識している3次元の宇宙はさらに高次元空間に埋め込まれた膜(ブレーン)のようなものではないかと考える宇宙モデルで、幕宇宙論とも言います。高次元空間にはブレーンが多数存在し、隣り合うブレーン同士が衝突するとその巨大なエネルギーによって火の玉のような状態になります。これがビッグバンです。またブレーンの衝突は周期的で膨張と収縮が無限に繰り返されるとされています。これをエキピロティック宇宙論と言い、その名の由来となったのが古代ギリシャ哲学の一派であるストーア派の思想です。
宗教や哲学における循環思想
宇宙が繰り返されるというのは、宗教や哲学によく見られる世界観で、古代インドでは1つの宇宙が誕生し消滅するまでの期間を劫という単位で表し、周期的に想像と破壊を繰り返すとしていました。また、メソアメリカのマヤ文明やアステカ文明でも循環思想が根付いており、特にアステカ文明の神話では世界は4度滅んでおり、現在は5番目の太陽の時代だとしています。

