0:00 はい、その大変な時期を過ぎた後は、ではどういうことがね 待っているのかというのを読んでいきましょうね 二十四、五歳ですね ここで芸が確定する「最初」がやってきます 辛い十七、八歳の頃を頑張って乗り越えたら 二十四、五歳ぐらいで一つの到達点に至るということですね この時期は、一生の芸の確定する「最初」 まだ「最初」であると 稽古が本格化する境目であると まず歌声と姿勢というこのね 十代の終わりぐらいに、声変わりしたりしてちょっと不安定になっていた あるいは背がしゅーっと伸びてきて、不安定だった歌声と姿勢というのが
0:46 二十四、五歳くらいになると確定すると この二つは、年齢の充実に応じた大人の芸が生まれ出る源であると ここから大人の芸の第一歩ということなんですね そのため、はた目にも「腕利きの役者が現れた」と人も注目するのであると かつて名声のあった人との勝負で 新人の魅力に観客が新鮮さを感じて、勝ってしまうと 周囲も過大評価をし、本人も上手だと思い込んでしまうと 名人と対戦をした時にですね 二十四、五歳の若さというもので、そちらが勝ってしまうと 名人を打ち負かしてしまうということが、まま起こると その時に「あ、俺ってこんな名人にも勝てた」という風に思い込んでしまう
1:37 上手だと思い込んでしまうと、これは情識ですよね こういうものは危険な訳です 「これもまことの花にはあらず。」という風に言っているんですね ですから、この二十四、五歳というのは 「芸の確定する最初」というね 「大人の芸の最初」ということだから これはまだ実はスタートラインだということですね これも本当の花ではないんですよと 一番何かこういい年齢でですね もう何かこう「若さ」という、発するものがあってですね それが何とも言えない魅力であったりするんですけれども そこでやっぱり慢心してはいけませんよ という風に世阿弥さんは言っている訳ですね
2:24 「たとひ、人も褒め、名人などに勝つとも、 これは一旦めづらしき花なりと思ひ悟りて、 いよいよ物まねをも直にし定め、名を得たらん人に事を細かに問ひて、 稽古をいや増しにすべし。」 ずっと稽古しとかなアカンね 人も褒めてくれて、名人に勝つということがあったとしても これは一旦珍しさが生んだ魅力の花であるよ、というね 珍しさ、その時分のまだ花だという訳ですね
3:09 二十四、五歳という時分の花であるという風に しっかり悟らないといけませんよと それで益々「物まね」物真似をする、人の真似をするというこれが勉強ですよね だからお稽古ということですね 益々お稽古を「直」これは実直とかいう単語がありますよね 真面目にということやね、真面目にしなさいよと それで「名を得たらん人」名人に、ということですね 名人に細かく質問したりして、教えを受けなさいと そうして「稽古をいや増しにすべし」と もっともっと稽古しなくてはいけないよと これはよう分かりますね、この頃は本当にようさん学べる時期でもありますね
3:56 それで吸収もよくする時期ですから この時代に習得するというのはとても大事ですね 「されば、時分の花をまことの花と知る心が、真実の花になほ遠ざかる心なり。」 この時分の花を、まことの花という風に思ってしまうということだよね 二十四、五歳というのは、まだまだ時分の花であるのに 「あ、もうホンマの花に俺至ったわ」という風に 思ってしまうということだよね、錯覚ということですよね 錯覚してしまうと、真実の花により一層遠ざかってしまいますよ という風に言っている訳ですね だから二十四、五歳というのもやっぱり練習しなさいと
4:48 いうことになる訳ですね しっかりと名人に細かく聞いてですね しっかりと練習をしなさいよと 浮かれるなということを世阿弥先生は仰っている訳ですね さあ、大人の魅力の第一歩が、どこで大成してくるのかというと その後ですね、三十四、五歳以降 三十四、五歳、これは盛りの極め この年頃の芸は、絶頂期の境目であると この時期に、心得の一つ一つを全てさとり、しかも上手になっていれば 天下に認められ、名声を得ているに違いないと
5:33 三十四、五歳で、色々な今まで身に付けてきた技術というものですね これをしっかりとマスターしていれば そして天下に認められているようになっていればいいんだよ という風に言っている訳ですね もしこの時期に「花」を極めていなければ 四十歳以降は、芸が下がっていくだろうと ここが一つの見極めポイントになるという風に 世阿弥は言っている訳ですね 三十四、五歳でもう天下に認められなくてはいけないと いう風に言っています やっぱりこれは、その当時の状況ですよね 色んな能の流派がある中で、自分達の一派というものをしっかりと 天下にアピールできるぐらいの芸の力というものがないと、もうダメだよと
6:19 いう風に言っている訳ですね そうではなかったら、もう四十歳以降は下がっていくばかりだと、つまり 「上がるは三十四五までの頃、下がるは四十以来なり。」ということですね まだまだ皆さんはありますよね、年はね だからしっかり頑張ってくださいね 三十四、五歳を一つの目標にして頑張っていただきたいと思います この時期に都での名声を獲得できなければ 芸の奥義を極めたと思ってはならないと この絶頂期にこそ、自重せねばならない 過去の舞台を振り返り また将来の芸のあり方についてあらかじめ考える時期であると だからやっぱり、天下を極めてしまったとしても
7:08 それで驕ってはいけませんよという 驕り、慢心というのは何においても禁物 どの年代においてもダメだよと 「初心忘るべからず」ですね その気持ちというのをずっと持ち続けていなくてはいけませんよと いう風に言っている訳ですね 三十四、五歳というのが、これは一つの見極めの時期 この時期に天下を取っていなかったら もう自分には才能がないんだと思って 別の道というものも考えてもいいのかもしれませんね 一つの見極めの時期であるということです
7:55 盛りの極め、芸の見極めの時期、一つの見極めの時期になる訳ですね ここで芸を極めていれば、上手になっていても慢心禁物ですね 将来というものも視野に入れる時期になる訳ですね この先ということも、ちょっと考えなくてはいけませんよという
8:42 そういう時期に差し掛かっているのが三十四、五歳ということになる訳ですね それでその後、四十四、五歳、花が失すると だんだん何か悲しくなってくるんですけれども この年頃から、芸のあり方が、全く変わってしまうだろうと 身体的な花も、観客の目に写る花も消え失せてしまうから 次世代の役者に譲って、自身は添え物のつもりで 控えめに出演するのがよいと もう私はこの時期ですね、悲しいですね でもよく分かりますね、身体的な花がなくなってゆく 色んなところにガタがき出すという、年齢的にそういう時期ですね 「気持ちはあっても体が~」みたいなことが多くなってしまいますね それで観客の目に写る花というのもなくなってしまうので
9:29 バトンタッチの時期であるよという、これもよく分かりますね 次世代の役者に譲って、自身は添え物と思って 控えめに出演するのがよいと もう「皆さんが主役だ」と思って授業もしている訳ですね そう思ってやっていく時期になるんですよと そして五十歳を過ぎると この年頃からは、何も演じない以外に方法がないと 「麒麟も老いては駑馬に劣る」と 千里の名馬も老いては凡馬に劣るということわざがあると しかし、本当に奥義に達した名人ならば、できる演目はほとんどなくなって 見どころが少なくなったとしても、花(芸の魅力)というものは
10:14 残っているだろうということですね 何か悲しくなってくるけれども、それだけやっぱり芸というものに対して シビアであるということですよね だから、年を取ったらもうそれだけで何かベテランみたいな 上手いみたいな、大御所みたいなね そうやって人々から、何て言うんだろう、あげられるというね 「先生先生」と言われて何かいい気になってはいけないということですよね 年を取っても、とてもシビアに自分自身を客観的に見る目というもの そういうものを持っている とても何かちょっと残酷で厳しいような気もするけれども やっぱりそれだけ、自分の芸というものに対して真剣であったということが
11:00 何か伝わってきますよね 五十歳過ぎは残っている花というものもあるから、ということですね それだけ一生懸命やってきたんだから、残っている花というものもあるから それでちょっと演じたりもしたらいいんだよ という風に仰ってくださっています 芸という道に進んだ人の一生と言いますかね 一生というのは本当に厳しいものがあるんだなということも伝わってくるし 今私達はその世阿弥 「私は」ですね、私達と皆を入れてはいけませんね 私はそんな世阿弥ほどの プロフェッショナルの道を極めるということはしていないけれども それでも自分の身に置き換えて何か為になったり感じたりするところもある
11:45 皆さんも、今日はあったんじゃないかなという風に思います こういう風に言ってくれているのは『風姿花伝』という本なんですね だから何かとても奥義と思うと 難しいことを書いているんじゃないかとか思われるかもしれないけれども 意外と、とても今の私達にも役に立つ、身に付くことが多いので 何かちょっと道に行き詰まった時なんかには 「あ、世阿弥の言葉!」と思って 何かこういうのを見てみるのもいいかもしれませんね 読書ガイドはあんまりないんだけれども いくつか現代語訳、原文もあげてくださっているのもあります 『風姿花伝』ソフィア文庫にもありますし、学術文庫にもあるし
12:34 全集的なものにも入っていますから、色んなバージョンがありますからね 是非、興味がある人は検索してみてください 作家が手がけたものとして、タイトルが魅力的ですね 『すらすら読める風姿花伝』というリンボウさんですね、林望さんという方は 非常にこの能というものにも造詣が深い方でいらっしゃって お能の本なんかも、いくつか書いていらっしゃる方です そういう方が、この『風姿花伝』を解説してくださっているという これも読みやすいものです また今日やったこのお能そのものについて知りたいという方は 例えばこういったホームページなんかもありますので こういうところをちょっと検索してみられるというのもいいかなと思います
13:20 また、これですね ちょっとプリントには挙げなかったんですけれども この「文化デジタルライブラリー」というので検索してみてください そうすると、日本のこの伝統芸能と言うんですか、歌舞伎とか文楽とか そういったものを基本的なことから学べるよという そういうページがあるんですね その中に、今日私達がやった 「お能」ということを解説してくれているページもあります 文楽、近松が、ちょっと上が色々変わっていますよね それでここのところで「教材で学ぶ」「公演記録を調べる」 「収蔵資料を見る」とかね 色んなコンテンツがあるんですね 例えばこの「舞台芸術教材で学ぶ」というのは、雅楽、能楽がありますよね
14:10 お能のこと、歴史なんかも学ぶことができますから、とても充実していますので 是非ね一度訪れてみてください 色んなコンテンツが上がっていますのでね 見てみてくださいね さあ、今日はここまでにいたしましょう ちょっと今までと文学のジャンルが違いましたので 物語とかエッセイとはまた違った、読み応え読み味わい学びというものが あったんじゃないかなという風に思います また、感想を聞かせてくださいね では、今日はここまでにします、お疲れ様でした